花芽分化とは、植物が栄養生長から生殖生長に移行すること(花成)により、花芽が形成されることです。栄養生長とは、植物が幹を伸ばし、葉を増やし、根を深く張って大きく成長することです。生殖生長とは、子孫を残すために花を咲かせ、実をつけることです。
植物は発芽後、他の植物との生存競争に勝ち残るため、根から吸収した養分や光合成による養分を自身がより大きく成長するために使います(栄養生長)。栄養生長の過程である条件が整うと、栄養生長から生殖生長に切り替わります。切り替わるための条件は、植物によって様々です。低温に一定期間遭遇し花芽分化することを春化(バーナライゼーション)といいます。
ナスやトマトなどの果実を収穫する果菜は、花が咲かないと実が付かないので、どうすれば花芽分化するのかを考えることが重要です。いっぽう、ホウレン草や白菜などの葉を収穫する葉菜や、ダイコンなどの根菜は、花芽分化によって葉や根の成長が止まるので、どうすれば花芽分化しないようにするかを考えることが重要になります。
花芽分化と関係の深い現象に、とう立ち(抽苔)があります。とう立ちとは、栄養生長時に節間が詰まった状態で葉の展開を続ける植物の短い茎が、花芽分化に伴って急速に伸長することです。より広範囲に種を落とすため、より高く伸びようとする現象です。たとえばホウレン草がとう立ちすると、茎が硬くなります。キャベツがとう立ちすると、結球しなくなります。大根がとう立ちすると、根が太らなくなります。例えば冬越えする野菜についてとう立ちを避けるには、種袋に「耐寒性」「低温伸張性に優れている」「とう立ちしにくい」「晩抽性」などと記載されているものを選ぶと良いです。
花芽分化の条件はいろいろあって複雑なので、以下の通り表にまとめてみました。
長日条件 | 一日の日照時間が、一定時間よりも長いこと |
例) | シュンギク、ニラ、ホウレンソウ、ラッキョウ、ラディッシュ |
短日条件 | 一日の日照時間が、一定時間よりも短いこと |
例) | サツマイモ、サトイモ、シソ |
種子春化型 | 種まきをしたときから、低温(0~5度)に一定期間遭遇 |
例) | エンドウ、カブ、コマツナ、ソラマメ、ダイコン、チンゲンサイ、ハクサイ、ミズナ |
緑植物春化型 | 一定の大きさに成長してから、低温(5~10度)に一定期間遭遇 |
例) | イチゴ、カリフラワー、ブロッコリー、キャベツ、ゴボウ、ニンジン、セロリ、ネギ、タマネギ、ニンニク |
高温条件 | 一定の大きさに成長してから、高温に一定期間遭遇 |
例) | レタス |
栄養条件 | 温度や日長に関係なく、ある一定の大きさに成長 |
例) | インゲン、キュウリ、トマト、ナス、ピーマン、トウガラシ |